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BLの終焉

Rあり、男性同士の恋愛小説を載せております。

水星の欠片 6 

水星の欠片 6






母親の目を盗んでひとり分のトレーを自分の部屋に運び、
お代わりに見せかけご飯もおかずもかっ浚ってきた。


「お米とか食べてた?」

「長野ではあんまり…でも東京に戻っておばあちゃんが
食べさせてくれた」

「第二次世界対戦中も戦後も食糧難で
大変だったらしいけど」

「それより広島と長崎に落とされた原爆って
……ビックリした」

「…調べたのか」

「うん。
戦争に負けてアメリカの援助を受けて
立ち上がり、高度成長、オリンピック…バブル。
バブルが弾けて日本は不景気に陥って今に至るんだよね。
でもネットの広がりはすごいね」

「今のことはともかく、まだ十四年しか生きてないから昔のことは
分かんなくて」

一応歴史の勉強はしてるから分かる程度で恥かしい。

「ネットとか本を読めばいいんだよね」

…その通りです。

「もしかしてパソコン覚えた!?」

「覚えた」

「……やっぱ、馨は天才だ。
だから今の時代に呼ばれたんだよ。
あ、ご飯食べなよ!」

「…ありがとう。
いただきます」

(いただきます)
とか、あんまり言わない。
塾には行きたくないから自分で頑張ると言い張って
自分の部屋にこもってるからご飯も一緒に食わないし。

ああ…
馨の時代の子は躾が厳しかったのかな。

「…美味しい!
健のお母様は料理が上手なんだね」

「そのカツレツなんか近所のお総菜屋さんか
スーパーで買ってきて温めただけじゃないかな。
味噌汁しょっぱくない?」

「ううん。平気」

こんな嬉しそうに美味しそうに飯食うヤツ、
初めて見た。

本当に生身の身体なんだ。
お風呂も入れば食事もする。

「あ、トイレは二階にもあるから使って」

「…トイレ…と言うのは御手洗いのこと?」

そうだ、トイレの使い方も知らないのかな。

「今は勝手に水が流れるんだ。
後で教えてあげるよ」

「重ね重ねありがとうございます」

ペコリと可愛く頭を下げた。

「…ど、どういたしまして」

「そうだ、ネットでも調べてみるね」

「先に調べた方がいいかも…」


デリケートな問題だから。


「これ新しいパジャマだから着替えてて。
風呂入ってくるから」

「ありがとう」


それにしてもこんなことって、あるんだ……

心配で長く入っていられないけどお湯の中で
考えてた。

今日はいいけど来週はどうする?
見つからないように生活できるかな。

施設とかどこか遠くへなんて絶対に行かせたくない。

いいや、行かせない。

あんなに細くて女の子みたいな子がひとりでなんて
生きていける訳ない。

事情もあるし。

僕が馨を守らないと。


布団がクローゼットにあったから、馨をベッドに寝かせて…なんて考えていたら遅くなって慌てて二階に戻った。

彼はごく普通の青いストライプのパジャマ姿。
きちんと正座して畳んだ洋服を横においていた。

「…えっと…あ、布団出すね」

何、なんだ?

なんか……なんか…顔に血が上る感じがする。
どうしたんだ、自分。

「馨はベッド使って」

「ベッドを使ってる家の方が多いのかな日本は」

「それも調べたんだ?」

「この部屋にあるもの色々…
僕は布団でいい。
健はベッドが慣れてるでしょう?」

「でもお客さんだし……」

と、彼は正座したまま細い指を揃え頭を下げた。

「お客さんじゃなく同胞…兄弟のような意味で
僕をここへ置いて下さい!」

「馨!?そんなことしなくていいよ!
僕は楽しいんだから!」

ゆっくり頭を上げると少し潤んだ目をしていた。

どんなに心細くて恐ろしいだろう。
いきなりこんな世界に放り出されて。

「一緒に生きよう、馨」

「……はい」

…この家に住みつつだけど。





続く




本日も沢山の拍手、ご訪問ありがとうございました。

Category: 水星の欠片

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