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BLの終焉

Rあり、男性同士の恋愛小説を載せております。

Shangri‐La 37 

Shangri‐La 37





「敦くん、起こしてくれればいいのに」

シャワーした髪を拭きながら悠也さんがリビングにやって来た。

「…お疲れだと思いまして」

「疲れてないよ、敦くんに負担だったかとは思うけど」

「そうですね。でも慣れました。
あと5回くらいは平気です」

なんちゃって。

「……はははは…」

顔を引きつらせてる?
悠也さんらしくないな。

「早くここに来て下さい」

「…なんかね…ヤバい」

「何がですか?」

ソファにブランケット掛けて座ってる僕の隣に腰かけた。

「入れてくれる…?」

「ダメ」

「敦くん…美味しいもの作るから」

「嘘ですよ。
どうぞ座って下さい」

ブランケットをめくって彼の膝に掛けてあげた。

「―静かだねさすがに」

「この辺りは皆さん静かな元旦をお過ごしですよ」

「高級住宅街だからね」

「自分で言いますか、悠也さん」

「いや、そんなつもりは無いが幸せというのは―
こんな瞬間に感じるんだなと思ってね」

「またあなたらしいことを…」

「そうだろ?
永遠の恋人を手にしてるからね」

「どういう意味ですか」

「私は昔からロマンチストじゃない。
むしろ死ぬほどのリアリストだった。
世の中に夢も希望もありゃしないとか普通に思ってたよ。
そんな私の人生観を変えたのが…きみだ」

「……頑なだったあなたの考え方を僕が変えたと?」

「その通りですよ、女神様」

「僕は何もしてません」

「きみは存在してるだけでいいんだ。
誰もがきみに癒される」

僕はそんなじゃない。
本当はドロドロしたものだって抱えてる。

「そんなことありません。
僕だって俗な人間なんですから」

「きみはそう言うだろうと思ってた。
それはともかく、こうしてお正月を過ごすのは40超えてからだよ。
昔は留学してたのもあって普通の休日なだけだった」

お正月か。

違う意味で僕にはお正月なんて無かった。

「敦くんはお父さんと二人でお正月を迎えてたのか」

「母が亡くなる前のことは覚えてませんが
まともなお正月をそれこそあなたと暮らすまで迎えたこと
ありませんでした」

「お父さんクリスチャンだったっけ」

……

「それもそうですが…年末年始に働くと手当がつくんです。
だから父と年末年始を過ごした記憶はありません。
大晦日の夕方、夜勤の父を見送った後、
コタツを切ってコタツの中に敷き布団敷いて…でも寝ないで勉強したり
本読んだりして元旦のお昼くらいに帰ってくる父を待ってました」

お正月なのに引くような話しをして―

「食事はどうしてた」

「ご想像できるでしょう?
食べ慣れた菓子パンかカップラーメンかうどん」

「せめて蕎麦にすれば良かったのに!」

そこ!?

面白いな相変わらず。

「ですよね!
…父はとんちんかんなひとでしたから」

「うん、変わってる」

なんか可笑しくて可笑しくて。


「あははは!悠也さんに言われるなんて父もビックリしてますよ」

「敦くん、笑ってる場合じゃないよ!
お父さんだって思春期の子供をひとりで置いてまで
仕事することないじゃないか」

「でも…父は僕のために働いてましたから」

「それはそうだろうけど……」

「亡くなった後、僕名義の通帳が出てきて2千万くらいありましたよ。
そのお金は祖母に渡しましたけど」

「役に立ったんだね休みなく働いたお金が。
…寂しいけど」

「そうでしょうか。
父は生きたいように生きて働いて僕に記憶を残してくれました。
時々は思い出して辛くなりますけど…幸せだったのかも知れません」

「きみのような子を持って不幸だった訳がない」

「あなたが幸せだと感じてくれればいいです、僕は」

「…敦くん、もう1回ベッドに戻ろうか」

「お断りします!」


お正月から股関節を傷めたくない。
……どうせ今夜もまともに寝かせてくれないだろうけど。

「即答か、はは……」

―『不幸だった訳がない』…

無理心中しようとした父が?
僕が殺したようなものなのに?

悠也さんには幸せだったのかも知れないと言ったけど、違う。

問題は僕だ。

そうか、それなりに父は幸せだったと僕が思いたいんだ。
だから未だに毎日父の影がよぎる。




続く




本日も沢山の拍手、ご訪問ありがとうございました。

Category: 大野敦の憂鬱 21

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