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BLの終焉

Rあり、男性同士の恋愛小説を載せております。

水星の欠片 7 

水星の欠片 7





「僕、思い出したんだけど青山霊園に行った事がある」

翌日、母が出掛けた後、朝ご飯を食べながら馨が言った。

「いつくらい?」

「まだ小さな頃おばあちゃんと一緒に。
多分おじいちゃんのお墓参りじゃなかったかな」

「…そうなんだ。
今日、大丈夫?行ける?」

精神的にダメージ受けるんじゃないかな。

「……事実を自分の目で確かめたいから」

意志の強い眼差しだった。


「歩いても行けないことないけど
表参道から乃木坂まで地下鉄で行こうか」

「地下鉄…帝都高速度営団」

「えっ、帝都?
昔はそう呼んでたの?」

帝都とかなんかミステリー小説っぽい。

「何度か逃げ込んだし乗ったこともあるよ。
副総裁と祖母が知り合いで家にも来てた」

「そうなんだ…
あ、今は電車だけど蒸気機関車が現役で走ってた時代だったね。
走ってる蒸気機関車に乗ってみたかったな」

「そう?
僕はあんまり…揺れるし…」

「じゃ出掛ける時は何に乗ってたのさ」

「…自家用車で」

そうか、久世のお坊ちゃまだった。

「まだまだ自動車のほうが便利な時代だったのか…」

「僕も青山霊園くらい歩けるけど今の地下鉄も興味があるよ?」

「今は東京メトロって言うんだ。
一部都営だけど」

「東京メトロ……素敵な名前だよね」

「そんなこの考えたこと無かった…そうかも知れないな」

僕のおじいちゃんおばあちゃん世代の人間がどうやって生きてたのか
あの戦争中。

七十三年前の世界なんて自分は想像できない。

「十四年間で一番辛いことって何だったの?」

「辛いこととか考える暇がないというか
数時間後に死んでたっておかしくない
毎日だったから」

「ずっと戦争やってたんだからそうだよね」

「昭和二十年、三月の下町の大空襲で長野に自主的に疎開したんだけど
こっちのことが心配で生きた心地がしなくて。
戻ったら戻ったで山の手まで空襲…」

「十四歳ですごい体験してるんだね」

「僕など全く楽に生きてたんです。
僕のことより…原爆が落とされたなんて信じられない。
広島だけじゃなく長崎も…むご過ぎる」

生まれて十四年、原爆のことなんて深く考えてこなかった。

「……自分が超バカに感じるよ…」

「…蝶?長?」

「あっごめんね。
今の時代言葉が滅茶苦茶だから。
超って言うのはスペシャルな事だよ、すごいバカってこと」

「健は馬鹿じゃない!
どこの誰とも分からない僕を助けてくれたし
まだ付き合ってくれている。
…優しくしてくれてありがとう」

「全然!
そろそろ出掛けようか。
僕の服だけど着替える?」

「僕は何でも…健が穿いてるのジーパンだよね」

「ジーパンあったの!?」

「それもアメリカ帰りの伯母さんに聞いたし雑誌にも載ってたよ。
なんかいいなって思ってた。
アメリカのものは全部ダメで捨てられたけど」

「……ジーパンなんて捨てるほどあるから穿きなよ」

生まれる時代を選べない。

そんなの分かってるけど――
初めて感じた痛みに戸惑っていた。



続く



本日も沢山の拍手、ご訪問ありがとうございました。
短くてすみません。

Category: 水星の欠片

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