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BLの終焉

Rあり、男性同士の恋愛小説を載せております。

Shangri‐La 40 

Shangri‐La 40





「…はい。あの…悠也さん…なにか僕にして欲しいことありますか?」

「きみにして欲しいことなんてないよ。
ただ座っていてくれれば満足だ」

「あえて、です。
あえて探すと?」

「うーん…」
きっとそのままベッドルームに直行かと思ったら意外な事を
彼は言った。

「ああ……爪!爪切って欲しいな」

「それから膝枕に読み聞かせ」


「読み聞かせって…なにを…」

「このあいだきみに取り寄せてもらった有島武郎の
あったじゃないか」

「あれは短編ですけど詩やエッセイじゃなく小説ですから。
…それにあまりにも古い。
東野圭吾とか伊坂幸太郎や村上春樹など全く読みませんね」

「私は村上春樹は嫌いだ。
それより純文学のほうがマシだろ」

「太宰治は愛人と玉川上水で入水自殺したクズですけど」

「はは、辛辣なとこも好きだよ。
私も太宰治は読まない。
なんだかな、気持ち悪くてね。
まず女と心中するやつがどんな小説書いたって響かないよ」

「ファンはおられますよ」

「変わり者くらいだろ?」

「またそんな事を…」

「外では言わないから大丈夫だよ」

そういう問題でもないんだけど。

「あとさあ…耳かきとか頼んでいい?」

ー遠慮がちに聞かなくていいのに。

「……いいですよ。
何でもして差し上げます。
まず爪切りですね。手を洗ってきてください」

「はいはい」


……

いつも傍で世話をしてあげられない。
お互い忙しいから仕方ないけれど。

彼はなるべく家に帰るというが、毎日決まって帰れる訳じゃないし。
総理は相変わらず春くん恋しさで公邸にはお住みじゃない。

総理ほどになるとそれも叶うのだろうが。

なんて考えつつ救急箱を引っ張り出した。



「敦くーん、シャンパン持ってきたよ」

テーブルの上にグラスと氷に瓶ごと置いた。

……あーあ、持ってきちゃった…。

「あなたは飲みたいだけじゃないです?」

「せっかくだからまったりしつつ…が楽しいじゃない」

「……いいですよ、こっち座って下さい」

彼の手を取って爪を整え始めた。

「敦くんの爪…誰に似てる?」

「父ですね。
全体的に父似です」

「男の子は母親に似ると言うけどね。
何枚か写真見せてもらったけど細面の綺麗系だもんね。
確かに似てるか」

「動かさないで下さい、危ないから」

「はーい」

悠也さんはどちらに似てるのかな。
お父様にもお母さまにも似てない!と言うに違いない。

お父様とは少し打ち解けたけれど近親憎悪というのは
ややこしく複雑なことだから僕があまり口を出してもどうかと思う。

「爪、磨きますね」

「磨いたほうがいいの?」

「整えて磨いたほうが清潔感が出ますから」

「敦くんの爪はいつも綺麗だね。
何も塗ってないんだろう?」

僕の指を頬に擦りつけながら彼は言う。

「女性じゃないので塗りません。
磨くだけですよ。
手を放して下さい、作業できないから」

「……できれば何時間も撫でていたい」

「そんなことしてたらすぐに休日は過ぎて行きますからねっ」

「ですよね!続けて下さい」

……

「今度は右手を出して下さい」

本当はこのままじゃ単なる介護…ならぬ作業で終わる。
それでも綺麗に磨いてあげると
「敦くん、はい」

シャンパンをよこすものだから
仕方なくシャンパングラスを手に取った。

「…綺麗ですね…」

なんて魅力的なゴールドの…そして弾ける泡。

どうぞ飲んで下さいと言ってるみたいだ。

そう言えば…お屠蘇が嫌いだからシャンパンで乾杯しようと
悠也さんは話してた。

お正月だから飲んでもいいんだけど…お世話してからだ。

「やっぱり後にします」

何とか理性を保った。




続く



本日も沢山の拍手、ご訪問ありがとうございました。

Category: 大野敦の憂鬱 21

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