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BLの終焉

Rあり、男性同士の恋愛小説を載せております。

水星の欠片 13 

水星の欠片 13






「それにしてもすごいね。
七十三年で液晶テレビにエアコン、パソコンに
スマホ…。
今の人は何不自由ない生活ができる」

母さんがいないからリビングでエアコンの涼しい風にあたりながら
僕らはコーラを飲んでいた。

「このコーラも。
ラムネは飲んだことあるけどね」

「でもSF小説のようにはなってない。
人は月には立ったけど住んでないし
火星も開拓してないし
車も空飛んでないよ」

「そんなものじゃないかな。
夢を見たかったんだよ、人は。
貧乏していても半世紀くらい経てば素晴らしい未来が
待ってるって」

僕が経験したことのない地獄…か。

「……疎開とか辛かった?」

「僕なんて疎開する年齢じゃなかったけど母親と一緒に長野の
遠い親戚の家にいて楽だったんだ。
まさか原爆や神戸と東京の大空襲とか沖縄のこととか
現実に起きるなんて思ってなかった。
能天気すぎだ…」

「仕方がないよ。
政府や軍部が嘘ばかり言ってたんだから」

「…国民はまんまと騙されて殺された。
どんなに無念だったか」

「……」

そうだ。
馨の両親もおばあさんも…犠牲者だ。

なんか気がまぎれること無いかな…えっと…

「あ、やっぱり母さん岩手に行くって。
僕たちもどっか行こう」

「健は学校の友達とどこか行かないの?」

「……学校の友達は学校だけだよ。
みんな塾で忙しいし足の引っ張り合いしかやんないんだ」

「どうしてそうなるの?」

「どうしてかな…小学校の友達はほとんど近くの中学校で。
今の学校じゃ他の子にとっても知らない人間ばかりで警戒してるんだよ」

「健も苦労してるんだね」

「苦労じゃないよ。
馨に比べたら全然!」

「生まれる時代は選べないから。
時代が違えば悩みや苦労の種類は変わるの当たり前だし」

「…そうだね。
で、どこ行こうか。
馨の行きたいとこに行こうよ」

「行きたいところ?
……海を見たい」

それは思ったけど夏休みの海は死ぬほど混んでる。
馨をそんなところに連れて行っていいのかな…?

「海水浴って小さな頃行ったきりでどこに行ったのか
覚えてなくて」

海水浴…

「そうか長野は海なし県だし…
東京は危ないから
それどころじゃなかったんだね」

「海なし県…?」

「あ、ごめん。造語だよ。
長野とか栃木とか山梨は海がないだろ?
海がない県だから海、無し、県」

「そうか、そうだよねっ
面白いな今の人は」

「だろ?
でも海か…混んでてもいい?」

「本当はどこでもいいんだ。
…健と一緒なら」

「……」

なんだろう、この感情は。

この前も同じような事があった。

今まで感じたことのない、心臓が締め付けられるような感覚…。

「なんか暑くない?」

「え、涼しいけど…健…顔が赤い。
熱があるのかな」

その細い白い腕が伸びてきて指が僕の額に触れ…
「うわっ!」
反射的に後ろに飛び下がった。

「…たける…?」

「ちょ、ちょっとトイレ!」

慌ててリビングから逃げた。




続く




本日も沢山の拍手、ご訪問ありがとうございました。

Category: 水星の欠片

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