FC2ブログ
Admin   Newentry   Upload   Allarchives

BLの終焉

Rあり、男性同士の恋愛小説を載せております。

水星の欠片 14 

水星の欠片 14





「わっ、冷た!」

「そう?気持ちいいよ」

庭の水撒きがてらホースの水をかけあって
遊んでいた。

「健、逃げるの下手くそ!」

そう言って笑う馨に儚さはない。
生命力溢れる十四歳。
成長しないのは僕なんかに分からない理由があるんだ。

消えることなんて絶対ない。

僕はそう思って疑わなかった。
…てか、考えるのも嫌だったんだ。

消えることを考えたら本当にそうなりそうで怖くて。


「夏休みは長いから色んなとこに行けるね。
まずは海。
どこの海がいい?」

「江ノ島!」

即答はいいけど…
あのさまを見て幻滅しないかな。

ゴミだらけ人だらけ。

「泳ぐの?」

「ううん。泳ぐの苦手だから散歩でいい。
健は泳ぐ?」

「…いや、混むから泳がないよ。
海の家で海見てるだけでいいかな」

「海の家って今はどんなの?」

「そうだなあ…
自分の目で確かめた方がよく分かるよ」

何て言うか…カオス状態だ。
昔はただ休む所だったかも知れないけど。

「江ノ電は初めて!」

馨は藤沢駅からはしゃいでいた。

「元々電車好きなの?」

「蒸気機関車とかディーゼル車だけど。
でも新幹線にはビックリした。
けど江ノ電もいいね風情が好きだ」

「腰越からが良いよね、海が見えるよ」

電車は住宅街を抜けパッと景色が光に包まれる。

眩しい夏の光が電車の窓から入ってきて…
「海!たけるっ海だよ!」
馨が僕の腕を掴まえ半ば叫んだ。

「腰越に鎌倉高校前駅、七里ヶ浜は
本当に景色がいいよね。
だから鎌倉高校前駅で降りて景色見たら
江ノ島に戻ろうか」

「うん!」

鎌倉高校前駅のホームは国道を挟んで海が真ん前。

アマチュアカメラマンが写真を撮ったりもする。

僕らはホームに降りてベンチに座った。
夏でも海風が心地いい。


「海の家が邪魔くさいね」

「あんなに沢山建ってるんだ。
すごいね」

「今はねカフェみたいな海の家ばかりだよ」

「カフェって表参道にいっぱいあるお店?」

「そうそう」

「夏だけでしょ?
…なら仕事だから仕方ないよ」

「…馨は優しいね」

海を見つめたまま彼は応えた。
「苦労を知らないだけだよ」
と。

……珍しく無表情。
綺麗だけど。

でも、あの時代に生まれて苦労を知らない訳ない。
一族郎党を失い辛くないはずがない。

なのに口に出さない。
僕なんかと違ってメンタルが強いんだ。


「…風が気持ちいい」

彼の髪が揺れ頬を縁取る。
…まるで女の子だな。

女の子よりピュアで可愛い。

「海風だからベタベタしない?」

「ううん、全然。
お天気だし海は綺麗だし…連れてきてくれて
ありがとう」

「…まだまだ色んなとこに行こうね」

「うん。
あ、江ノ島に行くんでしょ?」

「そうだった。
今度藤沢行きの電車が来たら戻ろうよ」

「すごい楽しみ」



(まだまだ色んなとこに行こうね)

その約束が叶うものだと僕は思っていた。




続く




本日も沢山の拍手、ご訪問ありがとうございました。

Category: 水星の欠片

TB: 0  /  CM: 0

top △

コメント

top △

コメントの投稿
Secret

top △

トラックバック
トラックバックURL
→http://haru1924.blog.fc2.com/tb.php/4013-9b7cf285
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

top △

2018-09