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BLの終焉

Rあり、男性同士の恋愛小説を載せております。

水星の欠片 15 

水星の欠片 15





「平和が嬉しい」

混んだ砂浜を歩きながら馨が
ボソッと呟いた。

本当に切実な言葉…

「夏じゃなけりゃこんな混んでないんだけど」

水辺のはしゃぐ水着の群れを見てると
ウンザリだ。

「…水着も変わったね。
女の人は強かったけど今はもっと強そう。
見て、あの水着!ほとんど裸だね」

赤やら花柄やらのビキニがイヤでも視界を過る。
アイドルは可愛いとは思うけど
オバサンはちょっと…ね。

「馨は見なくていいから!」

馨の手をグイグイ引っ張って熱い砂の上を
早足で歩いた。

ピュアな馨に見せたくなくて。

「あれだって時代の流れだよ。
平和の象徴だ。
戦争に負けてアメリカの占領地になって
高度成長でオリンピックでしょ、
バブルが弾けドン底に落ちた。
山あり谷ありは当たり前だから
後十年経ったらまた変わるよ」

後十年…僕は二十四歳…馨は十四歳のまま?
先の事は分からないけど。


「馨は大人だね。
自分の状況を把握して受け入れるなんてさ。
僕ならパニックになると思う」

「それは…戦争経験がある八十七歳だから」

「あはは、そう言えばそうだけど十四歳の
身体だし十四年しか生きてない。
やっぱり十四歳だよ」

「うん…暑いね」

「カフェ入ろうか。
喉も渇いたしお腹空いた」

「…健は結構お金持ちだね」

「僕?
…お年玉とかお小遣いは全部貯めてあるから
二百万近くあるかな。
でも二百万なんてすぐに無くなる金額だと
思うよ?」

「僕も貯金してたけど戦争のせいで〇円」

そうだ、戦争でこの国は一度空っぽになったんだ。

「仕方ないよ。
…どこ行く?」

国道まで戻り水族館前でそう聞いたけど
彼は決めてたみたいで…
「あそこ」
と、向のパンケーキの店を指差した。

「…馨はあそこ知ってるの」

「インスタ映えするパンケーキがあるんだって。
芸能人のインスタグラム見たよ」

どんだけ適応してるんだ!

僕だって知らない情報持ってるなんて…マジ卍。

「…馨…マジ卍ってもしかして知ってる?」

「知ってる」

当然のように言ったーー

やっぱりか。


「…わあ、こんな綺麗な食べ物を直接見たの
初めて!」

彼の前にはベリー類と
生クリームの山。

その下に薄めのパンケーキが三枚あった。

僕のはチョコバナナ系。

「前クレープ食べたじゃん」

「クレープとパンケーキは違うよ。
裏原宿のアイスクリームも一度食べたいな」

裏原のスポットも知ってるのか。

好奇心が強くて頭がいい彼らしくて
好きだなあと…思ったんだ。

それからー
パンケーキ食べて大橋を渡り江ノ島に行った。

「江ノ島神社に行ったことはあるんだ。
その時は立派な橋じゃなく
引き潮の砂浜を歩いて」

「歩いて!?」

「うん。
でも今の方がいいよ」

「悪いことばかりだと思ってた。
自然は破壊されて公害は一時期酷かったって言うし」

「ううん、こんな楽な乗り物もある」

僕たちが乗ってるのは…エスカレーター。
江ノ島エスカーとか言うやつ。

「夏でも石段上って大変」

「時代が変わって良いことも悪いこともあるんだね」

「確かに東京は高いビルが沢山で星も見えない夜は悲しいけど
人間の中身は変わらないと思うよ?」

「…そうかな」

「日本人は基本親切で優しい…健みたいに」

「…そんなこと…そんなことないよ」

「健は普通に高校に行って大学に行って
勉強してね。
…僕の分も」

海風に吹かれながら笑みを浮かべ馨はそう言った。

まるで別れの言葉みたいじゃないか。


「ほら、夕陽が沈むよ健」

江ノ島のタワーから見る海は初めて見る輝きで
馨がそこに溶けて行くようでぎゅっと
手を繋いだ。




続く




本日も沢山の拍手、ご訪問ありがとうございました。

Category: 水星の欠片

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