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BLの終焉

Rあり、男性同士の恋愛小説を載せております。

水星の欠片 17 

水星の欠片 17





もしかすると最初に出会ったあの空き家に戻ってるかも知れないと思って全速力で駈けて行った。

かおる、かおる、馨!
と心の中で叫びながら。

息せききって辿り着くと
鎖で巻かれた門の扉はそのままで
何の気配もなかった。

それでも馨と行った公園やコンビニ、
駅前も探した。

暗くなって月が出るまで。

とぼとぼと家に帰ったのは夜中だった。

そして家中もう一度探したけど
…いる訳ない。

だって馨自身が予感したんだから
消えることを。

二階の自分の部屋に戻ると
馨の使っていたパソコンや読んでいた本が
視界に入って……

しゃがみこんで泣いた。
涙が渇れることがないんじゃないかと
言うくらい溢れて止まらなかった。

そのまま寝込んだらしく
朝の光で目覚めた僕は夢じゃないことを
実感したんだ。

昨日の服のまま床に寝てたし
手紙も…そのままテーブルの上にあったんだから。

自分が寂しいのと燃えている表参道のどこかで
震えてるんじゃないかと思うとたまらなくて
暫くの間、カオルロスで本当に無気力だった。

でも馨は勉強しろと言っていた。
その約束だけは守って問題なく高等部に
トップの成績で行けたんだ。

馨、僕はちゃんとやってる。
だから早く…僕のとこに帰って来てと
毎日祈ってた。



馨がいなくなってもう三年経って―

高等部から共学になって女子がいても
何の興味もなかった。

だって馨より綺麗で性格の良い子なんて
いないから。

誰にもLINEも教えなかったしね。


「藤原って遊んでなさそうだけど
彼女いんの?」

と、チャラいのに言われても
「俺、興味ないし」
そう答えるだけ。

馨以外にはときめかないんだから
仕方ない。

「カラオケ行かね?
女子がさお前が行かなきゃ行かないって言うんだ。
頼むよお前の分出すからさ」

「金に困ってないよ」

「だよね、寮に入るヤツはいるけど
一人でマンション暮らしなんて
金持ちの息子くらいだろ」

「対価は…成績で払ってる」

「あはは、学年どころか全国模試でもトップだったって?
それじゃ親も許すよな。
だから、カラオケ付き合えよたまには」

「……」

馨との約束だ。
やってるつもりだよ、俺。

想いも変わらない。

あ、自分のこと(俺)って言うようになったんだ。
(僕)ってお坊ちゃまみたいで嫌で。
馨は僕でいい、馨によく合ってる。

スマホに残ってる馨の画像、
ロック画面とホーム画面で…笑ってる。




「ねえねえ、健くんも歌えば?」

仕方なくついていったカラオケ。
歌いたくもない。
いつだって楽しくない。

「俺はいい」

「だって折角来たのに」

「坂本が歌いなよ」

「…坂本じゃないよ、ユリカ!」

男子三人とこの坂本を入れて女子三人…

合コンかよ。

仕組んだな山崎…。
こんなのにいつまでも付き合ってはいられない。

馨が…いつ帰ってくるか…
その時に俺がいなきゃ馨が悲しむ。

「山崎、俺もう帰るから」

煩いカラオケルームの中で聞こえなかったらしいから
リュックを持って部屋を出ると
坂本もついてきたんだ。

「あたしも帰る!
電車同じ方向だから一緒に帰ろう」

「……」

俺が黙って外に出ると
坂本が後ろにいた。

「あたし高等部に入学したときから
健くんのこと好きだったんだからっ」

俺の背中に叫んで周りの他人が振り返ったり
二度見したり。
恥かしいやつだな。

思わず「チッ」と舌打ちした。

何度も何人にも告られたけど時間の無駄。

でも坂本ってこんな積極的だっけ?
髪も染めてない、化粧もしてない普通の女子で
意識なんて全くしてなかった。

でも…サラサラの肩までの黒髪が馨に…似てる。

ま、馨の方が百倍可愛いし綺麗だけど。

「…好きになるなと言う権利ないけど
俺、好きな子いるから」

「嘘つき!あたし毎日見てるんだから!」

確かに授業終わればマンションにとっとと帰ってる。
そんなこと見てたんだ。
女子って怖いな。

「……勝手にすれば?」

俺が駅に向かって歩くあいだずっと
パタパタとローファーの音が聴こえていた。




続く




本日も沢山の拍手、ご訪問ありがとうございました。

Category: 水星の欠片

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