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BLの終焉

Rあり、男性同士の恋愛小説を載せております。

水星の欠片 32 

水星の欠片 32





馨がいなくなったその夜
雨音を聴きながら一睡もできなかった。

また置いていかれたと言う想いと
いつ会えるのか分からない不安感で
焦りもあったけれど
それより失望感で気持ちが深く沈んでいた。

大切な半身を失うと人は無気力になるんだ。


ただ、大学には進まないと…そうぼんやり考えていた。
だからちゃんと学校には行ったんだ。


そしてー

志望していた国立大に受かり…
けれど群れる気分にはならなくて
留年しない程度に勉強はしていた。


「おーい、健!
今日は合コン行こうか」


「キャンパス内で大声出すな目立つから」

中等部からの同級生の山崎がいつも誘うけれど
行く意味がない。

「お前、いつだって目立ってるよ」

「…悪いけどもっと有意義な時間の使い方を
したいから断る」

「女の子に興味あるだろ。
昔からモテモテだったくせに」

「誰にも興味ねーし
お前と違って遊ぶために大学に進んだんじゃない」

「高等部の時クラスの女子に
つきまとわれてたろう」

「だから、つきまとわれただけだ。
俺には好きで付き合ってる子がいるから。
前にも言ったろう!」

「マジで!?
お前目当ての女の子になんて言い訳するんだよ!」

変わらないな、高校の時と同じ事を
繰り返してる。

「知らないね。
じゃ、用があるから帰る」

人付き合いは良くない。
何にも興味がない。
馨、馨、馨だけで俺は出来てるんだ。

そんな俺でも話しするくらいの友人はいた。
友達の一人くらいいないと馨が悲しむ。

いつ帰ってくるか分からない馨を待って
もう四年経つけれど。

マンションは変わらず同じ部屋、
ただ身長は五センチ伸びて…馨と二十センチ差。

華奢で可愛くて綺麗で…優しい馨が恋しい。
馨を想いながら自分を慰めるのも飽きた。

馨の使っていたパソコンで予備校にも行かず
公務員試験の勉強をしていた。

自分の為でもあり
馨の為でもあり―

逢いたい気持ちが強すぎて勉強していても
少しの音でも気にかかって玄関のドアを開けたり
馨の部屋やバスルームも覗いた。

「勉強がはかどらないな…」

これじゃ。


それでも……
なんとか経済学部を卒業し勿論試験に受かり
国家公務員として霞ヶ関の財務省に赴いた。

目指すは事務方トップの事務次官だ。

馨は喜んでくれるだろうか。
(健はすごいな、僕も嬉しいよ)
きっと、そう言ってくれる。

馨を待って毎日忙しくても必ずマンションに戻ることにしていた。

…いつも玄関で絶望するんだけど。

「馨!?」
……

「馨?…いないよな。
今日もハズレだ」

ガッカリしてリビングのフローリングに
座り込むのがパターン。

また五月の雨が降っていた。
雨が降るとカーテンを開け、バルコニーに出て
辺りを眺める。

馨を探すんじゃなく雨空を眺める。

馨は雨が降ると嬉しそうに空を
眺めていたんだ。
(雨で炎が消えるから)
そんなことを言っていた。
この時代に存在していても。

だから俺もつい……

暗い空を見て、マンション前のコンビニにも目をやる。

また高校生がたむろしてる。
屋根があるから雨宿りか。

と、
次の瞬間、コンビニの自動ドアを二度見した。

自動ドアが開いて買い物袋を下げて……
道を渡ろうとしているのは―

馨だ!!

Tシャツにパーカー、ジーパン姿の

間違いなく馨だった。

「…俺が馨を見間違う訳ない!」

俺はもう慌てて玄関を開け駆け出し
エレベーターのボタンを連打した。

一階に降りるまでの時間が何時間にも思えて……

ドアが開くと目の前に馨が、馨が立っていた。

馨!と叫ぶこともできず腕を掴んで抱きしめた。


「…ご飯……作ろうと思って…。
たける、ただいま」




続く




本日もご訪問ありがとうございました。

Category: 水星の欠片

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